初監督作品「蛇イチゴ」で各賞を受賞し、一躍各方面から注目を集めた西川美和監督。今年5月には短編作品が劇場公開、現在は2本の新作の製作準備中と精力的に活動中だ。
デビュー作から才能を高く評価された監督でも、映画業界を目指した当初は未経験であることから苦戦の連続だったという。それでも夢をあきらめきれず映像業界に携われるならとテレビ制作会社の新人募集を受けたときに、面接官として是枝裕和監督に出会い、映画製作の現場へ携わることになった。
そんな監督に製作現場でのエピソードやこれからエンタテインメント業界を目指す人へアドバイスなどについて伺った。


最新作「女神のかかと」の撮影中に心に残ったエピソードはありますか?
西川 「特に印象的だったのは、後半部分の、大塚寧々さんが住むマンションのベランダに雨が降るシーン。雨を降らしてもOKというマンションを探すのが、一つ目の非常に大きな壁で。その物件を見つけ出してくれたのが、私が業界用語の一つも知らないときから一緒に仕事をしてきた大先輩でした。人通りの多いエリアにあるマンションだったので近隣の人に迷惑をかけずに大雨を降らさないといけない。ですから、幅20センチ位のところに隠れるように先輩に入ってもらい、ベランダの手すりに腰を掛けるような危険な体勢で、シャワーを使って雨を降らしたんです。限られた時間のなかでいいものを撮らなければいけないため、ものすごい緊張感のなかでの撮影でした」撮影では危険が伴うシーンもあるでしょうし、信頼関係がきちんと築かれていなければできない現場ですね。
西川 「ええ。何年か助監督をやってきたなかで本当によかったなあと思えるのは、会社とかの枠組みで縛られているのではない、人間関係を築くことができたこと。お互いの仕事の正確さとか信頼感だけでつながった関係ですね。一度そういう関係性が確立されれば非常に温かいところがありますが、逆に言うと信頼関係だけで結ばれている関係なので、言葉のたったひとつで崩れることもある危ういものでもある。だからこそ、仕事をしてきた経験そのものがものすごい財産だと思います」
映画撮影中の雰囲気はどのような感じなのでしょう。
西川 「映画の人たちって意外と青臭くなく、クール。そして撮影現場は学園祭的なノリとか、アットホームな感じとかはまったくない(笑)。普段から無駄話とか一切しなくても関係性がガチっとできているんですね。だから妙な緊張感みたいなものがありますよ。やっかいなところもありますが(笑)嘘とか建前とかがある世界じゃないので、私としては、居心地の悪い世界ではありません」
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